「男のきもの・織のきもの−大人の男のきもの談義

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No.35 長根英樹   2000.03.01 09:21 
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メールマガジン - No.0009 -2000.02.29 号
 1 紬織物
 

 ◆◇ 御召 ◆ 紬 ◇ 着尺 ◆ 羽織 ◇ 袴 ◆ 帯 ◇◆
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       【男のきもの】製品・価格・着こなし紹介

        2000.02.29 No.0009  配信数:0310  
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 ◆ ◇ ◆ きもの村 http:// www.kimono.gr.jp/ ◆ ◇ ◆


≪≪目次≫≫

 1 紬織物
    ・真綿紬(まわたつむぎ)
    ・玉紬 (たまつむぎ)
    ・紡績紬(ぼうせきつむぎ)
    ・その他の紬
 2 その他

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 1 紬織物

 日常の気軽な装い、あるいは趣味の凝った装いとして人気の高い紬
 織物(つむぎおりもの)。
 一般に紬といえば、「屑繭(くずまゆ)から糸を取った、節(ふし
 :ネップ)があったり、毛羽(けば)感の感じられる、素朴な表情
 が特徴の織物」ということになろうかと思います。

 しかしながら、一口に“紬”といっても、織の表情、着味等の面で
 様々なタイプの織物がありますので、今号では主に糸に着目をして
 紬織物の種類についてご案内をいたします。

               ◇

 「真綿紬糸(まわたつむぎいと)」
 繭を煮て柔らかくなったところを薄く引き伸ばし重ねフェルト状に
 した“真綿(まわた)”から引いた糸です。
 繭から直接引いた糸を数本束ねた糸とは違い、フェルト状になった
 ところから繊維をまとめて引き出していますので、繊維同士の絡み
 合いにより凹凸感や毛羽感のある素朴な風合いの糸となります。

 糸の引き方は、結城紬(本場結城紬)に見られる様に指先にツバを
 付けながらつまみ出して行く方法の他、回転式の糸車を用いて引く
 方法等があります。
 結城紬の場合、熟練の引き手が引いた糸は細く均一であまり大きな
 節(ネップ)は見当たりません。

               *

 「玉糸(たまいと)/座繰り糸(ざぐりいと)」
 2匹(まれにそれ以上)の蚕が一緒になって作った大きな繭を玉繭
 (たままゆ)と呼びます。
 この玉繭は、複数の蚕が吐いた糸が複雑に絡み合っているため機械
 で糸引をする事ができません。
 そこで、繭を煮て、柔らかくほぐれてきたところを数個分まとめて
 手引きによって糸取りをする方法、すなわち鍋の前で座りながら糸
 を繰る“座繰り(ざぐり)”の手法によって引かれます。

 糸の絡み具合によって所々に節(ネップ)が出来ますが、それ以外
 の部分はすらりとした長繊維の糸であるため、繊維を絡ませて引く
 上記の真綿紬糸とは違った光沢感が特徴の紬糸となります。

 ※座繰り手法による糸引きは玉繭だけに用いられる手法ではなく、
  時に1匹の蚕が作ったきれいな繭である“中繭(なかまゆ)”に
  おいても用いられることがあります。
  中繭の座繰り糸は、節の(ほとんど)ないすらりときれいな生糸
  となりますので、紬糸とは別の表情となります。
  人の手により自然に糸引きされますので、一般的な機械引きの糸
  とは違い張力(テンション)の面での負担が少なく、糸に弾力の
  残る風合いがあり、織味にこだわる場合などに用いられます。

               *

 「紡績紬糸(ぼうせきちゅうし)/絹紡糸(けんぼうし)」
 屑繭を細かく砕き、機械紡績により紡いだ糸です。
 繊維が絡み合っていることから、上記の真綿紬糸風の毛羽感が感じ
 られますが、微妙な“ほっこり感”の面で風合いに違いが見られる
 ことと思います。

 一般に、リーズナブルな紬アンサンブル等で用いられますが、紡績
 の仕方により糸の表情は様々で、極細の生糸風合いのものもありま
 すので、用途/製作意図により多様な織り表現がなされています。

               *

 紬織物は通常、上記3種類の紬糸とすらりと節のない生糸(絹糸)
 により織り上げられています。
 例えば、経緯(たてよこ)全ての糸に真綿紬糸を用いて、真綿紬糸
 1種類のみで織られるもの。
 経糸には絹糸、緯糸には玉糸、あるいは紡績紬糸を用いたもの。
 経絹に真綿紬糸と紡績紬糸を交互に織り込んだものなどがあります。

               ◇

 「真綿紬(まわたつむぎ)」
 結城紬(本場結城紬)に代表される紬織物で、経緯に真綿紬糸が用
 いられている紬です。
 熟練の手引きによる細く均一な真綿紬糸を用いた結城紬は、表面の
 毛羽感とほっこりやさしい風合いが感じられるものの、洋装素材の
 ツイードの様な節(ネップ)の目立つ紬とは違った表情となります。

 この他、経に絹糸を用い、緯に真綿紬糸を織り込んだ紬、あるいは
 経に絹糸、緯に紡績紬糸と真綿紬糸を織り込んだ紬についても、
 “真綿紬糸を用いた紬”として真綿紬と呼ぶ場合もあります。
 この場合には、用いる真綿紬糸の分量等により大分織味も変わって
 来ます。

 また、通産省認定の伝統的工芸品としての結城紬(本場結城紬)と
 は別に、“結城地方(茨城方面)で織られた紬”の場合には、全く
 真綿紬糸を用いない紬織物もあります。
 認証ラベルも違いますので、求める場合にはよく織の特徴を聞いて
 それぞれの手触り、地風の違いを吟味の上、お好み、用途に合わせ
 て選ぶことが大事だと思います。

               ◇

 「玉紬(たまつむぎ)」
 牛首紬(白山紬)等に代表される紬織物で、玉糸が用いられている
 紬です。
 節糸織(ふしいとおり)と、真綿紬と区別して呼ばれることもある
 織物です。

 長繊維糸による光沢感、すっきりとした表情が特徴で、真綿紬との
 大きな違いとなります。

 こちらも経緯に玉糸を用いたものの他、経に絹糸で緯に玉糸を織り
 込んだもの、絹糸と玉糸を交互に織り込んだものなどがあります。

 一般に、紬というと「結城紬」「大島紬」について語られることが
 多く、あまり注目度の高くないジャンルの紬と思いますが、光沢感
 とネップの表情の魅力深い織物で、個人的にも袷、単衣と同じもの
 で揃えているお気に入りの紬です。
 単衣の紬としては、真綿の温かみとは違ったスッキリ感が馴染み、
 重宝する織物だと思います。

               ◇

 「紡績紬(ぼうせきつむぎ)」
 紡績紬糸が用いられている紬です。
 男性用のリーズナブルな紬はこのタイプが主流と思います。

 一般に、経糸に絹糸を用い、緯糸に紡績紬糸、あるいは紡績紬糸と
 真綿紬糸、玉糸、絹糸などが織り込まれることが多いと思います。

 経糸にすらりとした絹糸を用いるのは、織り易いという意味合いも
 ありますが、経緯紬糸のものと比べ(経の絹糸の分)光沢感が生ま
 れますので、毛羽や節のある素朴な(ある意味で野暮ったい)紬と
 は一味違う洗練された感覚の紬を目指す製作意図が背景にある場合
 もあります。

               ◇

 「その他の紬」
 先に、「屑繭(くずまゆ)から糸を取った、節(ふし:ネップ)が
 あったり、毛羽(けば)感の感じられる、素朴な表情が特徴の織物」
 とのことで紬織物をご紹介しましたが、他に紬糸を用いていなくて
 も「各地域の伝統的な技法を用いた素朴な味の織物」という幅広い
 紬織物の捉え方もあろうかと思います。

 その代表が「大島紬」です。
 現代の大島紬は、基本的に経緯に絹糸が用いられていていますので、
 紬糸が用いられた織物という意味での紬ではありません。
 地風も一般の紬とは趣を異にする滑らかさが大きな特徴となります。

 かつては紬糸が用いられた織物で、まさに大島の紬だったのですが、
 絹糸を用いる現代においてもその名残から大島紬と呼ばれています。
 紬糸を用いない点を区別する意味で、紬をつけずに「大島」とだけ
 呼ぶ場合もありますが、地元の織物組合の正式名称は「大島紬」と
 なっています。

 「紬」をどう定義するかの問題は置くとして、大島紬は絣による柄
 表現や泥染めによる地域色の感じられる素朴な味のある織物です。
 私も秋口の最初の袷には、毎年大島紬が着たくなり、軽く滑らかな
 地風を楽しんでいます。

 もっとも紬糸を用いず、絣の細かいものについては極細の糸を用い
 泥染めの繰り返しにより糸をしなやかにしていますので、紬織物の
 特徴としていわれる丈夫さの面では意味合いが違うものと思います。


 「大島紬」の他、「黄八丈(黒八丈/鳶八丈等)」についても絹糸
 を用いたものでも紬と分類される場合がありますが、上記「各地域
 の伝統的な技法を用いた素朴な味の織物」という意味合いで用いら
 れているものと思います。

               ◇

 この他に、織物の地風は、
  ・撚  :撚(より)が強いか、弱いか。
       糸飛び(ヒゲ)、団子状の変わり撚が施されているか。
  ・織  :経糸緯糸の交差法則。
       平面的な織表情か、立体感のある表情か。
  ・整理 :織上がり後の工程で、シボを出したり、引き締めたり。
 といった部分でも違ってきます。

 また、全体の表情ということでいうと、
  ・色柄
  ・仕立て
  ・コーディネイト/着こなし
 等によってもずいぶんと印象が違ってきますので、時と場面に応じ
 自分の気持ち、スタイルにあったものを選び、装う楽しみは、非常
 に奥深いものと思います。


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 2 その他
 
 2月は風邪をひいて体調を崩したこともあって、今号のみの発行と
 なりました。
 今後は、少し発行間隔を空け、月に1回ほどのペースでお送りする
 ことといたします。

 2月の中旬以降雪が続き、積雪1mを越えた米沢。
 まだ春は遠い様です。

 みなさんからご意見、ご感想をいただければ幸いに存じます。 


                   きもの村 村長 長根 英樹

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  発行責任者 きもの村 村長 長根 英樹 HIDEKI NAGANE   

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  :1999年10月 1日   更 :2002年10月 1日


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